読書 / 読む / 文学 / 芥川龍之介 / 太宰治 / 夏目漱石 /宮沢賢治 / 雨ニモマケズ / 作品

(51)  J.P.ホーガンの訃報に接して

戻る

by meisakulive 作成日 2010年07月14日
 7月14日付けの新聞の訃報欄を見ていたらアイルランドでJ.P.ホーガン(69歳)が亡くなったという記事を見つけました。まだ現役の作家で新作も読めると思っていたのでショックでした。

 J.P.ホーガンは英国のSF作家です。ハードSFと呼ばれる分野がありますが、その代名詞ともいうべき作家です。1978年のデビュー作「星を継ぐもの」は衝撃でした。月面調査隊が月面で死体を発見します。それは5万年も前からそこにあるということがわかります。木星の衛星ガニメデでは地球のものではない宇宙船の残骸が発見され、物語は一気に展開します。太陽系や人類の歴史が想像を超えるスケールで明かされていきます。
 まさに息もつかせず読みきったことを覚えています。SFは「センス・オブ・ワンダー」だと言われますが、その言葉を心底体験できる作家の一人でした。以後、彼の作品は出版される度に必ず読むことになりました。

 評価はこれからなされていくと思いますが、個人的に思うことを書いてみます。
 50年代、60年代、(70年代)の英米SF文学は黄金期でした。数多くの傑作が生まれています。中でも一番尊敬している作家がA.C.クラークです。クラークはハードSFの巨匠です。豊かで正確な科学的背景に裏付けられた多くの作品を出しています。そこには単なる未来世界の描写に収まらないスケールの大きさがあります。「哲学的詩情」と呼んだ人がいますが、的確に言いえた表現だと思います。クラークの黄金期もまたSF界のそれと同期していました。
 80年代になるとそれらの熱気が冷めてきたように感じます。現実世界は急激に科学技術が浸透し変革が行われているのと対照的です。個人的にもSF作品に対しての興味が相対的に低下したように思います。そんな中、突如として現れたのがJ.P.ホーガンでした。80年代は、ウィリアム・ギブソンなどのサイバーパンクの流れもありましたが、なぜか今ひとつ乗り切れませんでした。現実世界の変化の方がスリリングだったかもしれません。そんな中、J.P.ホーガンだけは別格でした。ほとんど唯一夢中になれるSF作家だったともいえるかもしれません。クラークの傑作が一巡した後に現れた一連のホーガン作品がなかったら80年代のSF界はとてもさみしいものになったことは確かだと思います。
 
 訃報に接し、まだ新作が読めると思っていたので、とても残念なことです。ハードSFというと科学用語が出てきて難解だと思っている人がいると思いますが、そんなことはありません。敬遠している人は、この機会にご一読を薦めます。こんな世界が本当にあり得ると思えてきて、頭の中が太陽系くらい大きくなった感覚が味わえることでしょう。
 
 J.P.ホーガンの冥福を祈りつつ、まだ翻訳されていない作品を読めることを期待して待つことにしたいと思います。

 名作ライブ 鈴木


コメント

このトピックにはまだコメントがありません。