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(46) 図書館の思い出

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by meisakulive 作成日 2010年03月17日
 書物がいかに人類にとって大切であるかについての物語を前回取り上げました。それらの書物を集めて整理、保管、閲覧できるようにしたものが図書館です。今回は図書館についての雑感を書いてみます。

 人類が文明を持つようになり文化が生まれると記録を残したいと思うようになります。それを書物の形として後世に残すことができるようになります。そうすると、その知識の集積体ともいえる書物を一箇所に集めたいと思うようになるのは当然のことでしょう。歴史上で有名なものとしては、紀元前に作られたアレクサンドリア図書館でしょうか。当時は紙がなかったので直接パピルスに書きました。原本ができても、それを印刷して複製することはできないので、人手で写本を作ることになります。そうやって、アレクサンドリア図書館には数十万冊もの本が集められました。まさに巨大な知のデータベースであり、文化を継承する装置として機能してきたのです。

 以後、特に西洋社会では図書館はまさに知の集合体のシンボルともなっていきます。現在でも荘厳な建築の図書館に装丁の素晴らしい本の数々が納められていて、その伝統の深さを思い知ることができます。物語の舞台になることも多く、映画などでもたびたび目にすることができます。
 日本では、本格的な図書館が作られるようになったのは、西洋文明が大量に流入した明治以降のことだと思いますが、現在では国立国会図書館を始め、自治体運営で数的にはかなり充実していることはご存知でしょう。

 そういえば、近年の日本の小説でも、例えば村上春樹の「海辺のカフカ」では、私立図書館が重要な舞台となっていました。記憶のメタファーとして図書館という空間(そして時間)がどうしても必要だったのでしょう。

 以下に、図書館の個人的な思い入れについて書いてみます。

 実は、残念ながら社会人になってからは忙しいこともありますが、ほとんど図書館には行っていません。それ以前の学校時代には、とにかくよく行ったことを今、懐かしく思い出します。特に本格的に、読書に目覚めた中学入学後は、入り浸っていたように記憶しています。一番、身近にあったのは学校ですが、そこは図書館というよりは図書室でした。そこにあった本を順に読み漁りましたが、如何せんあまりレパートリーが多いとは言えません。そこで向かったのが(確か記憶では)市立の図書館でした。もともと歴史のあるところだったので、古い建物がたくさん残っていました。図書館もそのような洋館でした。

 「入り口を入ると高い天井と階段があります。高窓からは光が入り込んでいますが、少し薄暗い空間です。階段を上がります。黒光りしている古い木製の階段がミシミシ鳴ります。階上の入り口を入るとたくさんの書棚が並んでいる部屋に入ります。そこも天井が高い部屋ですが、あまり明るくはありません。どこか、空気がよどんでいる感じさえします。とても静かな空間です。本棚の前に行くと古い本の香りが漂ってきます。静かに時間が蓄積した匂いです。チクタクと壁の時計の針音が響いてきます...」

 今となっては様々なイメージが混ざり合って実際とはちがっていたかもしれませんが、私の中では図書館はそういうところでした。少なくても静謐な空間であったということは記憶にあります。そして時間が静かに堆積しているという感覚が本から漂う匂いとして記憶されています。そう、そここそは知識の迷宮への入り口であり、積もった過去への扉を開けることができる場所でもあったのです。

 現在の明るくて機能的な図書館とは違うと思います。ただ、ヨーロッパの古い図書館はこのような雰囲気を今も持っているように思います。機会があれば訪れてみたいものです。
 今でも古本屋ではこういう雰囲気を少し味わうことができます。その本ができてから蓄えてきた時間というものが視覚からだけではなく「匂い」という原初的な人間の感覚を刺激します。時々、神田の古書街を歩き回るのが好きですが、その理由は上に述べたような昔の図書館の記憶を呼び起こさせるからなのかもしれません。

 このところ電子書籍の話題がよく登ります。確かにいながらにして世界中の本を検索して自分の端末で読むことができるようになれば、いわば世界中の図書館を手中に収めることと同じなのでとても素晴らしいことです。
 しかし、電子データというのは、古い本と違って時間と共に腐ったり、朽ち果てたりすることはありません。それは今までの歴史の中で人類が構築してきたものとは根本的に異質なものです。

 図書館の薄暗い空間で偶然出会った一冊の本によって人生が変わるようなことはもうないのかもしれません。

 名作ライブ 鈴木

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