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(12) 「ファンタジア」の快楽

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by meisakulive 作成日 2009年06月16日
 ここでは、主に名作にからむ周辺の話題を取り上げています。
少々堅苦しい内容が続いたので、今回はとても楽しい映画をみてましょう。
映画にも名作がそれこそ山のように存在しています。

 今回は、その中でも異色のアニメ映画です。アニメといえば現在は日本が世界をリードしていて、近年にもたくさんの名作が生み出されています。それらはまた別の機会に取り上げることにして、今回はそれらに先立つ歴史的名作のディズニーのアニメーション映画「ファンタジア」(1940)です。アニメと言わなくても映画史上の名作で、見た人も多いと思います。まず何といっても目を見張るのは、世界が戦争をやっているときに、総天然色の鮮やかな映像と音楽が見事に融合した技術の高さです。まだ世の中はSP時代なのに、9ch光学録音サウンドトラックという時代を先取りした音響システムで公開されたとのことは驚く他ありません。(LPレコードが54年でステレオが59年にやっと出ています)。あまりに斬新だったので、公開当時は評価されなかったようですが、なるほどと思う話ではあります。

 以下、個人的なことを書いてみたいと思います。
この映画は、多分?十年前に劇場で観たはずなのですが、いつどこで見たのか記憶にありません。それでも、いくつかの音楽とそれに見事にマッチした映像は鮮明に思い出すことができます。つい最近ですが、この作品をビデオで入手して家で見ることができました。今ではDVDで入手して簡単に見ることができますが、私の場合、LD(レーザディスク)の中古版が100円で売られているのを店頭でたまたま見つけて、ためらわずに買ってしまいました。中古とは言え、内容的には全く問題はありません。(こういうときは、物の価値というものが全くわからなくなります)何年かぶりに見たのですが、月並みな表現しか言えませんが、とても新鮮でした。
個人的には昔見た記憶と今回見た印象で、再確認できたこと(つまりよく覚えていたこと)とあまり覚えていなくてほとんど新発見したことがあって、とても興味深かったので、そのことを書いてみたいと思います。

 まず、私にとって「ファンタジア」というと「魔法使いの弟子」と「交響曲第6番 田園」がまず頭の中にイメージされます。何十年前かに見た映画ですが、その音楽と映像が完璧に頭の中にインプリントされていたわけです。これらは今回観ても同じでした。「魔法使いの弟子」のミッキーの音楽にシンクロした動きと洪水の表現の素晴らしさは現在であってさえも奇跡としかいいようがありません。一方、「田園」の方は、何といってもベートーヴェンの音楽が牧歌的なギリシャ神話の世界と見事にマッチしています。10代後半、ベートーヴェンを集中的に聴いていましたが、この楽章を聴くとこの映像が頭の中をかけめぐるようになってしまいました。これだけ音楽を映像化できた作品は多分他にはないと思います。ベートーヴェンは、オーストリアの身近な農村風景をイメージしたはずですが、こういう描かれ方がされるのなら納得するのではないでしょうか。

 一方、以前見たところから抜け落ちていて今回再発見?したものとしては、「春の祭典」があります。もちろん今では名曲として名高いですが、初演は1913年で、その斬新さにセンセーションを起こしたことでも有名です。「田園」と対比されるべき音楽で、これを当時選曲したセンスのよさに脱帽するわけですが、これが私の記憶の中から抜け落ちていました。「春の祭典」は受験勉強をしながら聴いた記憶があります。もし観たのがその後だとするとはっきり覚えていただろうと思います。となると映画を観たのは、10代前半までということになります。もう一つ、終盤の「禿山の一夜」は、ホラータッチで刺激的な表現ですが、これもなぜかほとんど記憶にありませんでした。さらに終曲の「アヴェ・マリア」の清純な夜明けにつながっていくシーンも感動的なのですが、これもあまり覚えていませんでした。(昔は何を見ていたのだろうと反省です)このように今回、変な見方かもしれませんが、映画を観ながら自分史を回顧するという面白い体験をしたのでした。まるで個人的なことになってしまいましたが、音楽と映像の記憶の持つ力を改めて知った出来事でした。

 あわせて、今回知ったのですが、「ファンタジア」にはいくつかの版があるようです。それぞれ長さが違っています。公開時に入っていない「月の光」がDVDには入っているとか。(LD版には入っていない)まさにトリビアですが、あの名曲がどのように映像化されているのか、また興味をそそられてしまいます。
 現在は、デジタル技術全盛でCGによってリアルな映像が作れるようになりました。しかし、「ファンタジア」のように手間と愛情をかけて作り上げられた作品は永遠に残るものだとつくづく感じます。

 最後に余談です。音楽と映像のシンクロの奇跡としては、キューブリックの
「2001年宇宙の旅」(1968)の、宇宙船がステーションにドッキングするシーンで流れる「美しき青きドナウ」があります。このような美しいシーンは前にも後にも存在しないと思うのですが、この曲を聴くたびに宇宙船が回転する映像が頭の中を駆け巡ります。罪作りなことではあります。この映画と原作も、もちろん名作中の名作ですが、また機会を改めてということにします。

 名作ライブ 鈴木


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