前回の続きです。ライブラリやアーカイブの機能を持つ組織や機関を見て行きましょう。
まず、日本の文学では、日本近代文学館:http://www.bungakukan.or.jp/ があります。
他にも、文学館が各地域や作家ごとにたくさんあって、他分野から比べると比較的そろっているように思います。
生活、歴史、民俗に関するものとしては、次の2つがまず上げられます。
国立民族学博物館:http://www.minpaku.ac.jp/ は、世界の民族に関する資料を収集、保存、公開しています。
国立歴史民俗博物館:http://www.rekihaku.ac.jp/ は、日本の歴史、民俗に関する博物館です。
これらは共に、研究教育機関としての機能も持っているのが特徴です。
映画は比較的新しいメディアですが、歴史的なフィルムをアーカイブすることは他分野と同じように消失を防ぐ意味でも大切な役割を持っています。
東京国立近代美術館フィルムセンター:http://www.momat.go.jp/FC/fc.html が、その機能を持っていて、映画の一般公開なども企画しています。
これらは、民間企業として営利目的で作るのは難しいことです。公的な支援の基に運営される必要があります。国の予算は厳しいことはわかりますが、長期的な展望を持った運営をぜひしてもらいたいものだと思います。
以上の例は、ある意味恵まれた環境とも言えますが、これら以外にも漏れてしまう分野がたくさんあります。
例えば、以前取り上げた明治以降の洋楽の音楽家に関する資料を集めた組織に、日本近代音楽館:http://www.mlaj.gr.jp/members/jp/kindai.htm があります。
山田耕筰、芥川也寸志、武満徹など、著名な音楽家の楽譜などの資料を収集、整理、保存しています。そこの学芸員の方は、予算も潤沢ではないし、どうしても漏れてしまうところが出てくることが悩み、と言っていました。
音楽の場合は、音源としてのレコードの記録も重要です。生産されたSPレコードは大量にあるはずですが、これらも時間と共に失われてしまいます。こういった資料の収集、保存を担う組織こそ、急ぐ必要があります。前回のUCSBの蝋管ライブラリは、大学という公的機関ではありますが、その取り組みはとても羨ましいものです。日本は豊かな国であるはずですが、まだまだ文化的資源に対する評価が正当になされていないように思えてなりません。
視点を変えて欧米などの西洋と日本の違いについて考えてみます。
欧米では、ドキュメンテーションという考え方が徹底しているように思います。
仕事の例でも、日本の場合はお互い考えていることがよくわかるためか、口頭で言うと何となくわかってしまい、それで支障なく進んでいく場合が多いように感じます。
その点では、欧米式はきちんと文書化して役割、担当、責任をはっきりさせて進める方法を取ります。そのため、ドキュメントが大量に発生し、それをきちんと整理保存する必要が出てきます。そういったところからもアーカイブという考え方が徹底してきているのではないでしょうか。
文化面でも、日本や東洋では、師匠から弟子に口頭伝承という形で技が受け継がれていく例が多いといえます。弟子は、師匠の立ち振る舞いを肌で感じて技を見につけていくといったように、マニュアルで説明して伝えるといった方法とはまるで違う方法です。
どちらがいい、悪いといったことではありませんが、そういった文化の差が、アーカイブの考え方にも現れているとも思えます。しかし、今まで見てきたように、人類の宝とも言える文化を後世に伝えるためにも、我々も科学的合理的な方法で取り組む必要があると思うのです。
「もの」そのもののハード的な資源管理だけではなくソフト的な側面もあります。
まず、我々がそういったものに価値を見出すことがまず第1です。意志と熱意がないところには何も生まれません。さらに、アーカイブを運営する学芸員(キュレータ)の存在があります。豊かな知識と経験、情熱を持った人材が最も重要です。アーカイブができたとしても、こういったソフトパワーは、お金を出せばすぐ手に入るというものではありません。継続的かつ地道な努力こそ必要です。我々の意識の変革も大事ですが、こういった面では、日本はまだまだ遅れていると思えてなりません。
現在、多額の補正予算を組んで景気対策を行なう方針が打ち出されています。その中の文化政策として、「アニメの殿堂」が入っています。アニメも日本を代表する立派な文化であり、筆者も大好きなので、目を向けてくれたことは評価します。しかし、「ハコ」だけ作って中はどうなるのか大いに危惧します。確かに、アニメはわかりやすくていいのですが、
上に述べたように、急がないと間に合わない分野がたくさんあるのです。そういったところをきちんと調べた上で、計画的に予算をつけることこそ最も期待されることです。そういう説明があった上で予算をつけるのなら、一納税者として納得できます。しかし、政治の世界は、そういったことは二の次で、上辺だけの効果狙いになってしまうのですね。
話が日本の文化政策にまで来てしまいましたが、いろいろ考えさせられることではあります。
名作ライブ 鈴木
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