漱石関連も今回で一段落です。といっても文学そのものではなく、
文豪が西洋音楽にどう接したかというテーマです。
取り上げる本は、瀧井敬子著「漱石が聴いたベートーヴェン」
音楽に魅せられた文豪たち(中公新書、2004)です。
草枕でも述べましたが、明治時代には西洋文明や文化が一挙に日本に
入ってきて、あらゆるところで影響を与えました。
音楽も例外ではありません。西洋のクラシック音楽は、 ...
前回に続き1900年前後の音楽を取り上げます。文学や美術の
場合は、作品そのものを後世に残すことができます。クラシック音楽の場合、
楽譜の形で後世に伝えることができました。それらに加えて、19世紀には、
写真、録音、録画の技術が生まれました。20世紀には、それらが
新しいメディアとして花開くことになります。現在では、名作の多くもそれらなくしては
存在できないと言っても過言ではありません。 ...
前回はアメリカの蝋管音楽の紹介でしたが、今回は日本人による
歴史上初の録音といわれている音源の紹介です。1900年(明治33年)
に、パリ万博に訪れた川上音二郎一座が録音したものです。
これは、とても興味深い音源ですが、その前に復習です。
前回、紹介したようにエディソンの銀箔円筒式の録音の発明が、
1977年で、その後、蝋管蓄音機が市販されました。これは画期的
なことでしたが、ワッ ...
前回の続きです。ライブラリやアーカイブの機能を持つ組織や機関を見て行きましょう。
まず、日本の文学では、日本近代文学館:http://www.bungakukan.or.jp/ があります。
他にも、文学館が各地域や作家ごとにたくさんあって、他分野から比べると比較的そろっているように思います。
生活、歴史、民俗に関するものとしては、次の2つがまず上げられます。
国立民族学博物館 ...
ここでは、主に名作にからむ周辺の話題を取り上げています。
少々堅苦しい内容が続いたので、今回はとても楽しい映画をみてましょう。
映画にも名作がそれこそ山のように存在しています。
今回は、その中でも異色のアニメ映画です。アニメといえば現在は日本が世界をリードしていて、近年にもたくさんの名作が生み出されています。それらはまた別の機会に取り上げることにして、今回はそれらに先立つ歴史的名作の ...
前回に続き「波の盆」です。この作品の音楽は武満徹(1930-1996)が書いています。武満徹は、いわゆる西洋音楽の中の現代音楽というジャンルの作曲家です。多くの管弦楽曲、ピアノ曲、ギター曲などを残しています。しかしその中には日本的な感性が色濃く反映されています。その西洋と東洋を越えたところから聴こえてくる独特の響きに多くの人が魅了されました。海外にも多くの信奉者を持っています。私もその一人です。 ...
武満徹を偲んで、その音楽についてもう少し書いてみます。有名なものとしてはオーケストラと尺八、琵琶が共演しているノヴェンバー・ステップスあたりを一般的には上げることになるのでしょう。もちろん本分はそのような現代音楽ですが、前回書いたように、もう少しわかりやすく親しみやすい音楽もたくさん残しています。石川セリとのポピュラーソングのCDまで出しています。また、クラシックギターに愛着を持っていて、オリジ ...
今回は最近公開された新しい映画作品を取り上げます。
キャデラック・レコード ~音楽でアメリカを変えた人々の物語~(原題:CADILLAC RECORDS ,2008米)という映画です。1950年代から60年代のアメリカのポピュラー音楽の転換点を描いた作品です。ブルースの発展とロックの誕生までがアメリカの歴史と重なって描かれます。その音楽の演奏シーンもいいのですが、黒人社会で生まれた音楽がどのよ ...
前回は1950年代のアメリカを描いた作品の紹介でした。今回も関連して50年代アメリカの雰囲気がよくわかるドキュメンタリー映画作品を紹介します。
真夏の夜のジャズ (原題:Jazz on a Summer's Day 1959年アメリカ映画 82分)
この映画は、1958年に行われた第5回ニューポート・ジャズ・フェスティバルの模様を描いています。アメリカの開放的な野外コンサートの様子 ...
いつもはある名作をテーマにしていますが、今回はそれらを楽しむ上で個人的に思うことを書いてみます。
読者の皆さんは、日々たくさんの本や映画、音楽、絵画などに触れ、大げさに言えば名作に出会う旅を続けていることと思います。本当に感動できる作品に出会ったときはこれに勝る喜びはありません。しかし、なかなかいつも簡単に出会えるとは限りません。
ここに、アメリカの作家シオドア・スタージョンが言 ...
ここでは主に今までに出会った本、音楽や映画などからこれはと思うものを取り上げています。(従ってかなり個人的主観的な選択になっています。)何年も前に出会ってよいと思ったものはたくさんありますが、それらについて何かを語ろうとすると少々困ったことになります。何らかの形で書くためには正確さを記す必要があります。感動し印象に強く残った記憶はあるものの、さすがに何年も前に読んだ本のディテールを全て覚えている ...
今回は、我々が本(文学)、映画、音楽、絵画(美術)などを楽しむ際にとても重要な意味を持つメディアについて考えてみます。
この中で映画は比較新しいメディアです。(といっても既に100年以上の歴史はあるが)その他は千年単位での歴史を持っていることはご存じの通りです。それらを振り返ってみましょう。
例えば、昔々ある所で誰かが物語を作ったとします。その誰かの中の存在だけではいずれ消滅してしま ...
前回は、紙への印刷技術によって「本」という複製メディアが誕生したところまでした。今回はその続きです。
「本」あるいは「書物」は現代人もその恩恵を受けていることはご存じの通りです。歴史も既に500年以上あることになります。「本」は人間の知的な営みを生産する重要な役割を果たしてきました。印刷された最初の書物は「聖書」だったことは西洋社会としては当然のことでした。しかし、書物は啓蒙だけではなく ...
1枚の絵画を巡る物語を軸に色々書いてみます。画家の名前はフェルメール、17世紀オランダはデルフトの人です。その絵のタイトルは「青いターバンの少女」またの名を「真珠の耳飾りの少女」といいます。光に輝く真珠のイアリングを付けた少女がこちらを振り返っています。青いターバンが鮮やかです。背景が黒く塗りつぶされているフェルメールにとっては珍しい構図ですが、それだけにこの少女の瞳が見る人をつかんで離しません ...
いつもはどちらかというと古い時代の話をしていますが、今回は最近話題のホットな映画「THIS IS IT」について書いてみます。
6月に急死したマイケル・ジャクソンは、大きく世界のメディアで取り上げられ社会現象にまでなりました。最後のライブになると言われたロンドン公演の1か月前のことでした。この映画は、死の直前に行われていたリハーサルを映画化し10月28日に世界同時公開されたものです。2週 ...
あなたはベストセラー派とロングセラー派のどちらでしょうか?その違いについて思うところを書いてみます。
近年、新刊本や新譜CDが毎月大量に出ます。流行の最先端を行こうと思ったら、このようなものを買うことになります。その中からヒット作が生まれます。売れ筋のチャートなども存在して何が売れているかわかります。短期間に売り上げを伸ばす作品はベストセラーとして話題になり、それがさらに売り上げに拍車を ...
2009年も残り後わずかになりました。早いものでミレニアムを改めてから10年が経とうとしています。日本には元号という昔からの時代区分があります。明治、大正、昭和まではその名称と共にその時代がはっきりイメージできました。昭和xx年に何があった、という共通の認識が持てたものです。平成になって20年以上が経ちました。しかし、平成xx年といってもどうもピンときません。西暦xxxx年と言った方がわかりやす ...
前回は19x9年を振り返りました。今から10年前の1999年はまだ記憶に新しいことでしょう。21世紀は正確には2001年からですが、1999年から西暦2000年にカウントアップするというのはやはり気分的にもワクワクしたものです。
さて、この1000年に一度のMillennium (千年期)に英国で行われた興味深い投票がありました。今からちょうど10年前の1999年末のことです。Music ...
ピアノ音楽の話です。クラシック音楽を聴く人でピアノ曲が好きな人にとってマウリツィオ・ポリーニは神のような存在です。つい最近の昨年末のことですが、そのポリーニがついにバッハの平均率のアルバムを出しました。これは事件です。
ポリーニはモーツァルトやベートーヴェンの古典派からシューベルト、ショパンなどのロマン派、さらにはシェーンベルグ、ウェーベルン、ストラビンスキーなどの現代音楽まで多くのレパ ...
今までにたくさんの「名作」が世界中で生み出されてきました。その中には日本産の「和」あるいは「邦」と、外国産の「洋」の2つがあります。この関係は微妙です。例えば美術に関しては「日本画」と「洋画」、映画では「邦画」(日本映画)と「洋画」(外国映画)、ポピュラー音楽では「邦楽」(今はJ-POPと呼ばれる)と「洋楽」、文学では「日本文学」と「外国(海外)文学」などと区別されます。
日本の場合は、 ...
このところ思うところの雑感です。
昔と比べて現代社会では情報が爆発しています。ここでも何度かメディア史などを紐解きながら触れてきました。現在は、新聞、雑誌、本、テレビにインターネットといったメディアを通して毎日大量の情報が発信されています。その情報の洪水に押し流されないようにしなければいけません。下手をすると溺れてしまいます。
その中から自分にとって意味のある情報を読み解くスキルが必 ...
人類による文字と印刷技術の発明によって本の大量複製ができるようになり、世界が変わった話は(28)(29)でもしました。
今回は印刷技術の発明以前に一冊(一巻)の書物がどれだけ価値があったかという物語についてです。
というのも、つい最近の報道を見て色々思ったからでした。グーグルによる世界中の書籍の電子化プロジェクト、さらには電子書籍端末のキンドルやiPadの発売の報道がそれです。国内 ...
前回の続きです。東洋で守るべき写本は仏教の経典でした。その話が井上靖の「敦煌」に結実しました。一方、西洋で後世に伝えるべき写本を扱った作品が今回のテーマです。
戦後すぐに、死海の西岸にあるクムランで、大量の巻物になった写本が発見されたことは大きな話題になりました。書かれたのがちょうどイエス・キリストの時代だからです。つまりこれらを解読できれば現在の西洋の基盤を支えているといってもいい原始 ...
ここでは、歴史的なことを踏まえて書くことが多いので、どうしても昔はよかったというノスタルジックな話になりがちです。個人的にもそのような古典的な作品に愛着があります。そのような文脈では、本やレコードといった「物」への愛着を捨て去ることは難しいことです。しかし、現在の世の中に生きている私たちは、時代にあったスタイルも共存させていく必要があるだろう、というのが今回の主題です。
例で説明しまし ...
中国と日本で愛され数奇な運命をたどった歌とそれを巡る人々の物語です。
その歌のタイトルは「何日君再来(ホーリイチュンツァイライ)」(いつの日君帰る)です。中国では、戦前に上海で活躍し黄金の声と称えられた周璇(チョウ・シュアン)によって歌われたことによって広く知られることとなりました。その後、李香蘭(山口淑子)、戦後は、鄧麗君(テレサ・テン)によっても歌われ広く大衆に親しまれました。現在に至る ...