今回から定期的にスタッフのお薦めの本、映画、音楽などをこのコーナーで
紹介することにします。
蔵書関連だけではなく、新しいものや、ちょっと面白いものなど、
幅広く取り上げたいと思っています。
1回目は、トップページでも見ることができる夏目漱石関連です。
やはり日本の文豪といったら漱石を最初に思い浮かべますよね。
たくさんの個性的な名作を後世に残してくれたことに感謝です。
今回 ...
昨日の夕刊に、ある作家の訃報が載っていました。
英国のSF小説家J.G.バラードが78歳で亡くなったとの記事です。
個人的にSF小説には強い思い入れがあるので、いずれ取り上げようと思っていましたが、
追悼の意味も込めて急遽書いてみます。
SF(Science Fiction)という用語は、今でこそSF映画などで広く認知されていますが、
SF小説の全盛期は、1950年代でした。主として ...
漱石の続きです。「草枕」は漱石の中でもユニークな作品で、
読み解くのは中々大変なものがあります。
出だしの文章は、あまりにも有名ですが、全体を通して読み通したことが
ある人はあまり多くないかもしれません。筆者も同じでした。今回リストに
真っ先に入れたのは、自分でもこの際きちんと読み通そうと思ったからでも
あります。お蔭様で今回は無事最後まで読み通すことができました。
しかし、この作 ...
前回に続き「草枕」です。取り上げる本は、
「草枕変奏曲 -夏目漱石とグレン・グールド-」
(横田庄一郎著、1998)です。
グレン・グールド(1932-1982)は、カナダのピアニストです。
この本は、文学(草枕)と音楽(グールド)を行き来しながら変奏を行なう
という興味深い作りになっています。
初めに、なぜ、グールドなのかという説明が必要でしょう。
グールドは、孤高のピアニ ...
「草枕」の英訳本についてです。Glenn Gouldが手に取り読んだ本は、
Alan Turneyが英訳した「The Three-Cornered World」でした。
前回の「草枕変奏曲」の中で、この本とターニー自身の言葉がたくさん
引用されているので、まずはそこから。
表題ですが直訳ではありません。これは文中に出てくる「四角な世界
から常識と名のつく、一角を摩滅して、三角のうちに ...
漱石先生が続きます。前回まで「草枕」を取り上げた
ので、少々難しい話が続きました。今回は頭を柔らかくしましょう。
取り上げるのは、蔵書にもある「夢十夜」です。
「こんな夢を見た」で始まる不思議な十の夢の物語です。
それぞれトーンの違うオムニバス形式になっています。
第一夜は、「百年、私の墓の傍に坐って待っていて下さい。きっと
逢いに来ますから」と言われて100年待ち続ける男の話です ...
漱石関連も今回で一段落です。といっても文学そのものではなく、
文豪が西洋音楽にどう接したかというテーマです。
取り上げる本は、瀧井敬子著「漱石が聴いたベートーヴェン」
音楽に魅せられた文豪たち(中公新書、2004)です。
草枕でも述べましたが、明治時代には西洋文明や文化が一挙に日本に
入ってきて、あらゆるところで影響を与えました。
音楽も例外ではありません。西洋のクラシック音楽は、 ...
前回は、明治時代に録音された音源を取り上げました。こういった過去に残された記録をどう後世に伝えるか、その役目を担うライブラリあるいはアーカイブについて考えてみましょう。
文字やレコード録音、写真、フィルムなどに残された記録は、いわば人類の文化遺産とも言えるものです。これらは、何もしないでおくと散逸してしまい、二度と目に触れることができなくなります。そういった意味でも、それらを適切な形で保存し ...
既に使っている方もいると思いますが、蔵書リストのページの並び替えメニューを、
「よく読まれている本」にすると、読者数の多い順にリストが表示されます。
名作ライブの人気ランキングとして使えます。
本日現時点での上位20冊を以下に取り出してみました。
1.雨ニモマケズ 宮沢賢治
2.阿Q正伝 魯迅
3.羅生門 芥川龍之介
4.蟹工船 小林多喜二
5.人間失格 太宰治
6.斜陽 ...
今回は、名作ライブにも蔵書がある夢野久作の著書についてです。6月に追加版として「ドグラ・マグラ」と「少女地獄」を載せました。初回版に載せるのはためらわれましたが、今回は満を持しての登場です。(大げさかな)
「ドグラ・マグラ」ですが、天下の奇書と言われます。沼正三の「家畜人ヤプー」と双璧をなします。個人的にはこの二作は名作だと思っています。(名作の定義は人によるので、そう思わない人がいても ...
今回は、夢野久作に続き幻想と怪奇の世界を描いた特異な作家のお話です。その作家は、澁澤龍彦(1928-1987)です。フランス文学を中心に、マルキ・ド・サドの著書の紹介で知られます。裁判で有名になったこともよく知られています。たくさんのエッセイを書いていますが、どれも人間の精神面、特に陰の部分や暗黒面についての博識ぶりは他の追随を許しません。三島由紀夫も絶賛しており、多くのファンがいると思います。 ...
前回に続き「高丘親王航海記」について書いてみます。この幻想的な物語の豊かな語彙からつむぎ出される芳醇なイメージは筆舌に尽くせません。例えば、迦稜頻伽、羅羅人、采女、アンチポデス、パタリア・パタタ姫、などなど(読み方と意味はあえて伏せておきます)。地名、人名、固有名詞が多いですが、読み進めるとそこから様々なイメージが頭の中を駆け巡ります。難しい漢字も多いですが、漢字というのはこんなに豊かなイメージ ...
今回は、澁澤さんについての雑感を書いてみますが、極めて個人的なことになるのであしらかず。
もちろん面識があるわけでもなく、その著書を本格的に読み出したのは亡くなってからです。実は、私は80年代に澁澤さんが住んでいた北鎌倉の家からすぐ近くに住んでいました。鎌倉のどこという話をするときには、xx寺の近くというとすぐわかります。澁澤さんの家は、アジサイ寺で有名な明月院のすぐ近くです。私は80年代の ...
小説にはたくさんのジャンルがありますが、ミステリが好きな人は多いと思います。今回はその中から最近読んだ印象に残った作品を取り上げます。
始めに個人的なことからですが、私はミステリあるいは推理小説というジャンルはそんなに数多く読んでいるとはいえません。ミステリファンのような知識は持っていないことをまずお断りしておきます。(うかつなことを書くと叱られそうです)
いわゆる推理小説を多読 ...
いつもはある名作をテーマにしていますが、今回はそれらを楽しむ上で個人的に思うことを書いてみます。
読者の皆さんは、日々たくさんの本や映画、音楽、絵画などに触れ、大げさに言えば名作に出会う旅を続けていることと思います。本当に感動できる作品に出会ったときはこれに勝る喜びはありません。しかし、なかなかいつも簡単に出会えるとは限りません。
ここに、アメリカの作家シオドア・スタージョンが言 ...
ここでは主に今までに出会った本、音楽や映画などからこれはと思うものを取り上げています。(従ってかなり個人的主観的な選択になっています。)何年も前に出会ってよいと思ったものはたくさんありますが、それらについて何かを語ろうとすると少々困ったことになります。何らかの形で書くためには正確さを記す必要があります。感動し印象に強く残った記憶はあるものの、さすがに何年も前に読んだ本のディテールを全て覚えている ...
今回は、我々が本(文学)、映画、音楽、絵画(美術)などを楽しむ際にとても重要な意味を持つメディアについて考えてみます。
この中で映画は比較新しいメディアです。(といっても既に100年以上の歴史はあるが)その他は千年単位での歴史を持っていることはご存じの通りです。それらを振り返ってみましょう。
例えば、昔々ある所で誰かが物語を作ったとします。その誰かの中の存在だけではいずれ消滅してしま ...
前回は、紙への印刷技術によって「本」という複製メディアが誕生したところまでした。今回はその続きです。
「本」あるいは「書物」は現代人もその恩恵を受けていることはご存じの通りです。歴史も既に500年以上あることになります。「本」は人間の知的な営みを生産する重要な役割を果たしてきました。印刷された最初の書物は「聖書」だったことは西洋社会としては当然のことでした。しかし、書物は啓蒙だけではなく ...
1枚の絵画を巡る物語を軸に色々書いてみます。画家の名前はフェルメール、17世紀オランダはデルフトの人です。その絵のタイトルは「青いターバンの少女」またの名を「真珠の耳飾りの少女」といいます。光に輝く真珠のイアリングを付けた少女がこちらを振り返っています。青いターバンが鮮やかです。背景が黒く塗りつぶされているフェルメールにとっては珍しい構図ですが、それだけにこの少女の瞳が見る人をつかんで離しません ...
フェルメールの1枚の絵を巡る物語についての続きです。今回は、次のタイトルの小説とその映画化作品を取り上げます。
「真珠の耳飾りの少女」(原題:Girl With a Pearl Earring)
トレイシー シュヴァリエ著(1999)(白水社刊 2004)
「真珠の耳飾りの少女」(原題:Girl With a Pearl Earring)
ピーター・ウェーバー監督作品(イ ...
近代日本が生んだ名作のひとつ「銀の匙(さじ)」について書いてみます。著者は中勘助(1885-1965)です。作者の代表作であるばかりでなく、幼少年期の出来事と記憶を描いたこの作品は、今なお多くの人の共感を呼んでいます。
中勘助の子供時代の思い出を書いたとも思われますが、本人は、これは小説だと言っています。大人になってから昔体験した数々の想い出が美しい日本語で綴られていきます。
同 ...
あなたはベストセラー派とロングセラー派のどちらでしょうか?その違いについて思うところを書いてみます。
近年、新刊本や新譜CDが毎月大量に出ます。流行の最先端を行こうと思ったら、このようなものを買うことになります。その中からヒット作が生まれます。売れ筋のチャートなども存在して何が売れているかわかります。短期間に売り上げを伸ばす作品はベストセラーとして話題になり、それがさらに売り上げに拍車を ...
2009年も残り後わずかになりました。早いものでミレニアムを改めてから10年が経とうとしています。日本には元号という昔からの時代区分があります。明治、大正、昭和まではその名称と共にその時代がはっきりイメージできました。昭和xx年に何があった、という共通の認識が持てたものです。平成になって20年以上が経ちました。しかし、平成xx年といってもどうもピンときません。西暦xxxx年と言った方がわかりやす ...
昨年末に話題の映画「アバター」を観ました。ジェームズ・キャメロンの久しぶりの大作でもありますが、その映像技術の進歩には驚くべきものがありました。舞台は森が世界を支配する地球から遠く離れた衛星パンドラ、地球人がそこにしかない資源を求めて訪れます。そこには先住民のナヴィ族が自然と共生しています。2つの異文化の交流と衝突、そしてその自然との関係が軸となり物語が進んでいきます。
この映画を観てい ...
今までにたくさんの「名作」が世界中で生み出されてきました。その中には日本産の「和」あるいは「邦」と、外国産の「洋」の2つがあります。この関係は微妙です。例えば美術に関しては「日本画」と「洋画」、映画では「邦画」(日本映画)と「洋画」(外国映画)、ポピュラー音楽では「邦楽」(今はJ-POPと呼ばれる)と「洋楽」、文学では「日本文学」と「外国(海外)文学」などと区別されます。
日本の場合は、 ...
このところ思うところの雑感です。
昔と比べて現代社会では情報が爆発しています。ここでも何度かメディア史などを紐解きながら触れてきました。現在は、新聞、雑誌、本、テレビにインターネットといったメディアを通して毎日大量の情報が発信されています。その情報の洪水に押し流されないようにしなければいけません。下手をすると溺れてしまいます。
その中から自分にとって意味のある情報を読み解くスキルが必 ...
人類による文字と印刷技術の発明によって本の大量複製ができるようになり、世界が変わった話は(28)(29)でもしました。
今回は印刷技術の発明以前に一冊(一巻)の書物がどれだけ価値があったかという物語についてです。
というのも、つい最近の報道を見て色々思ったからでした。グーグルによる世界中の書籍の電子化プロジェクト、さらには電子書籍端末のキンドルやiPadの発売の報道がそれです。国内 ...
前回の続きです。東洋で守るべき写本は仏教の経典でした。その話が井上靖の「敦煌」に結実しました。一方、西洋で後世に伝えるべき写本を扱った作品が今回のテーマです。
戦後すぐに、死海の西岸にあるクムランで、大量の巻物になった写本が発見されたことは大きな話題になりました。書かれたのがちょうどイエス・キリストの時代だからです。つまりこれらを解読できれば現在の西洋の基盤を支えているといってもいい原始 ...
書物がいかに人類にとって大切であるかについての物語を前回取り上げました。それらの書物を集めて整理、保管、閲覧できるようにしたものが図書館です。今回は図書館についての雑感を書いてみます。
人類が文明を持つようになり文化が生まれると記録を残したいと思うようになります。それを書物の形として後世に残すことができるようになります。そうすると、その知識の集積体ともいえる書物を一箇所に集めたいと思うよ ...
ここでは、歴史的なことを踏まえて書くことが多いので、どうしても昔はよかったというノスタルジックな話になりがちです。個人的にもそのような古典的な作品に愛着があります。そのような文脈では、本やレコードといった「物」への愛着を捨て去ることは難しいことです。しかし、現在の世の中に生きている私たちは、時代にあったスタイルも共存させていく必要があるだろう、というのが今回の主題です。
例で説明しまし ...
今回はエンターテイメント小説の話です。少し前のことですが、古本屋で懐かしい作家の本を見つけました。アメリカの作家のエドガー・ライス・バローズ Edgar Rice Burroughs(1875-1950)の作品です。
「時間に忘れられた国」(創元SF文庫、原題:The Land that Time Forgot、1918)
実はE.R.バローズにはとても思い入れがあります。大分前 ...
前回の続きです。
アメリカの作家エドガー・ライス・バローズ Edgar Rice Burroughs(1875-1950)の作品について書いてみます。
前回は「時間に忘れられた国」について書きましたが、私にとってのバローズは、何といっても子供の時に読んだ「火星シリーズ」というSF冒険活劇小説の作家として永遠に記憶されています。
バローズを語るには個人的な読書体験をまず述べる必 ...
このコラムではある作家の創作による作品を取り上げることが多いのですが、そのような創作物以外にも優れたドキュメンタリーや評論の本がたくさんあって読書の楽しみを広げてくれます。
今回は千一夜物語で知られるアラビアンナイトのお話しです。
といっても、そのお話しそのものではなく、いかにしてアラビアンナイトが生まれて世界に広がっていったかという物語を解説した本からの紹介です。
西尾哲夫著「 ...
7月14日付けの新聞の訃報欄を見ていたらアイルランドでJ.P.ホーガン(69歳)が亡くなったという記事を見つけました。まだ現役の作家で新作も読めると思っていたのでショックでした。
J.P.ホーガンは英国のSF作家です。ハードSFと呼ばれる分野がありますが、その代名詞ともいうべき作家です。1978年のデビュー作「星を継ぐもの」は衝撃でした。月面調査隊が月面で死体を発見します。それは5万年も ...
中国と日本で愛され数奇な運命をたどった歌とそれを巡る人々の物語です。
その歌のタイトルは「何日君再来(ホーリイチュンツァイライ)」(いつの日君帰る)です。中国では、戦前に上海で活躍し黄金の声と称えられた周璇(チョウ・シュアン)によって歌われたことによって広く知られることとなりました。その後、李香蘭(山口淑子)、戦後は、鄧麗君(テレサ・テン)によっても歌われ広く大衆に親しまれました。現在に至る ...